#41 ロシア語の名詞の性とは?

ロシア語を学ぶうえで重要な文法の一つが、名詞の性です。
英語では「本」や「家」「学校」といった名詞を男性・女性に分類することはありません。しかし、ロシア語では、人を表す名詞だけでなく、物や場所、抽象的な概念を表す名詞にも性があり、基本的に男性・女性・中性のいずれかに分類されます。
最初は覚えることが多いように感じますが、ロシア語では名詞の語尾から性を判断できる場合が多く、基本的な規則を知れば見分けやすくなります。
この記事では、ロシア語の名詞の性とはどのようなものなのか、男性・女性・中性の見分け方や注意したい例外などを紹介します。
ロシア語の名詞には三つの性がある
ロシア語の名詞には、次の三つの性があります。
- 男性名詞 ー стол(机)
- 女性名詞 ー кни́га(本)
- 中性名詞 ー окно́(窓)
人を表す名詞であれば、その人の性別と名詞の性が対応していることがあります。例えば、оте́ц(父)は男性名詞、мать(母)は女性名詞です。
しかし、物や場所、抽象的な概念を表す名詞にも文法上の性があります。ロシア語では стол(机)は男性名詞で、кни́га(本)は女性名詞、окно́(窓)は中性名詞に分類されます。
もちろん、それぞれの物に実際の性別があるわけではありません。生物学上の性に対して、これらの規則は文法上の性であり、名詞を文法的な特徴によって分類する仕組みです。
そのため、「机は男らしいから男性名詞」のように判断するのではなく、それぞれの名詞が文法上どの性に属しているのかを覚える必要があります。
また、ロシア語では名詞の性によって、その周囲に置かれる単語の形も変化します。例として、「新しい」を意味する形容詞 но́вый は、修飾する名詞の性に合わせて形が変わります。
- но́вый стол ー 新しい机
- но́вая кни́га ー 新しい本
- но́вое окно́ ー 新しい窓
このような変化は形容詞だけでなく、代名詞や単数の過去形などにも見られます。そのため、名詞の性を正しく判断することは、ロシア語で文を作るうえで非常に重要なルールとなります。
男性名詞:子音/-й/-ь で終わる名詞
ロシア語で子音で終わる名詞は男性名詞に分類されます。
- стол ー 机
- дом ー 家
- брат ー 兄弟
- университе́т ー 大学
ロシア語では、このように語末に母音を持たず、子音で終わっている名詞の多くが男性名詞です。そのため、初めて見る名詞でもまず語末を確認することで性をある程度判断できます。
また、-й で終わる名詞も基本的に男性名詞です。
- музе́й ー 博物館
- трамва́й ー 路面電車
- геро́й ー 英雄
- ча́й ー お茶
さらに、-ь(軟音記号)で終わる男性名詞もあります。
- слова́рь ー 辞書
- учи́тель ー 教師
- день ー 日
- ого́нь ー 火
ただし、-ь で終わる名詞には、ночь(夜)や дверь(ドア)のような女性名詞もあります。そのため、必ずしも「-ьで終わる=男性名詞」と判断することはできません。
加えて、男性の人物を表す名詞の中には、па́па(父)や де́душка(祖父)のように -а/-яで終わっていても男性名詞として扱われるものがあります。名詞の性は語尾から判断できることが多いものの、人物を表す単語などには例外があることも覚えておく必要があります。
女性名詞:-а/-я で終わる名詞
ロシア語の女性名詞は、基本的に -а または -я で終わります。
- шко́ла ー 学校
- рабо́та ー 仕事
- ма́ма ー 母
- же́нщина ー 女性
このように語末が -а または -я であれば、多くの場合女性名詞であると判断できます。
ただし、例外として、па́па(父)、де́душка(祖父)、дя́дя(おじ)のように、男性を表す一部の名詞は -а や -я で終わっていても男性名詞として扱われます。
また、女性名詞には -ь(軟音記号) で終わるものもあります。
- ночь ー 夜
- дверь ー ドア
- любо́вь ー 愛
- тетра́дь ー ノート
注意点として、-ь で終わる名詞には男性名詞も存在します。そのため、-ь で終わる名詞は単語ごとに性を確認する必要があります。
- слова́рь(辞書)― 男性名詞
- день(日)― 男性名詞
- дверь(ドア)― 女性名詞
- ночь(夜)― 女性名詞
なお、両者の見分け方の一例として、-ь で終わる名詞の中で、-ость で終わるものは基本的に女性名詞です。以下の単語も、いずれも女性名詞になります。
- но́вость ー ニュース
- ско́рость ー 速度
- во́зможность ー 可能性
このように -а/-я で終わる名詞は女性名詞が多く、-ь で終わる名詞に関しては、一定の規則はあるものの、基本的には個別で覚えるようにしましょう。
中性名詞:-о/-е /-мя で終わる名詞
ロシア語の中性名詞は、基本的に -о または -е で終わります。
- окно́ ー 窓
- сло́во ー 単語・言葉
- ме́сто ー 場所
- мо́ре ー 海
- по́ле ー 野原
- зда́ние ー 建物
男性名詞や女性名詞と同じように、中性名詞も語尾を見ることで判断できる場合が多いです。
さらに、-мя で終わる名詞も中性名詞として扱われます。
- и́мя ー 名前
- вре́мя ー 時間
- пле́мя ー 部族
- зна́мя ー 旗
-мя で終わる中性名詞はロシア語で10単語のみと、非常に数が限られており、格変化も一般的な中性名詞とは異なる特徴を持っています。そのため、まずはロシア語で使う頻度が多い и́мя(名前)と вре́мя(時間)の2単語の格変化を優先的に覚えるのがおすすめです。
名詞の性は他の単語の形にも影響する
ロシア語で名詞の性が重要なのは、名詞そのものだけでなく、その名詞と関係する他の単語の形にも影響を与えるためです。
ロシア語では、形容詞は修飾する名詞の性に合わせて語尾が変化します。例えば「美しい」という意味の形容詞 краси́вый は、名詞の性に合わせて以下のように変化します。
- краси́вый го́род(美しい街)― 男性
- краси́вая у́лица(美しい通り)― 女性
- краси́вое мо́ре(美しい海)― 中性
同じ「美しい」という意味でも、男性名詞には краси́вый、女性名詞には краси́вая、中性名詞には краси́воеが使われています。
また、「私の」「あなたの」などを表す所有代名詞も同様です。例えば、「私の」を意味する所有代名詞は、後ろに続く名詞の性に合わせて次のように形が変わります。
- мой телефо́н(私の電話)― 男性
- моя́ маши́на(私の車)― 女性
- моё письмо́(私の手紙)― 中性
さらに、ロシア語では過去形の動詞にも性の違いが表れます。動詞の単数形の過去形では、多くの場合、男性が -л、女性が -ла、中性が -ло という形になります。
- Он чита́л кни́гу.
ー 彼は本を読んでいた/読んだ。 - Она́ чита́ла кни́гу.
ー 彼女は本を読んでいた/読んだ。 - Со́лнце све́тило.
ー 太陽が輝いていた。
このように、ロシア語では文の中にある単語がそれぞれ独立しているのではなく、名詞の性に応じて周囲の単語の形も変化します。
複数形では性による一致の区別がなくなる
ロシア語では、単数形の場合、男性・女性・中性の違いが形容詞や所有代名詞、過去形の動詞などにはっきりと表れます。
一方、複数形では、形容詞や所有代名詞、過去形などを一致させる際に、男性・女性・中性による形の違いがなくなります。
例えば、「新しい」という意味の形容詞 но́вый は、単数形では名詞の性に合わせて次のように変化します。
- но́вый дом ー 新しい家
- но́вая кни́га ー 新しい本
- но́вое окно́ ー 新しい窓
しかし、名詞が複数形にすると、名詞の性に関係なく形容詞は но́вые が使われます。
- но́вые дома́ ー 新しい家々
- но́вые кни́ги ー 新しい本
- но́вые о́кна ー 新しい窓
所有代名詞についても同様です。「私の」を意味する мой、моя́、моё は単数では名詞の性によって使い分けられますが、複数ではいずれも мои́ になります。
さらに過去形の動詞も、単数では主語の性によって語尾の形が異なります。
- Он рабо́тал.
ー 彼は働いていた/働いた。 - Она́ рабо́тала.
ー彼女は働いていた/働いた。 - Оно́ рабо́тало.
ー それは動いていた/動いた。
一方、複数では性に関係なく、Они́ рабо́тали.(彼ら・彼女らは働いていた/働いた)のように同じ形が使われます。
まとめ
ロシア語の名詞には、男性・女性・中性という三つの文法上の性があります。
主な特徴をまとめると、次のようになります。
- ロシア語の名詞には男性・女性・中性の三つの性がある。
- 子音や -й で終わる名詞は基本的に男性名詞である。
- -а/-я で終わる名詞は基本的に女性名詞である。
- -о/-е で終わる名詞は基本的に中性名詞である。
- -ь で終わる名詞には男性と女性の両方がある。
- па́па や де́душка など、-а/-я で終わる男性名詞もある。
- 名詞の性に合わせて形容詞や所有代名詞の形が変化する。
- 単数の過去形も主語の性によって形が変わる。
- 複数形では、性による一致の区別はなくなる。
名詞の性は英語にはない仕組みのため、ロシア語を学び始めたばかりの頃は難しく感じられるかもしれません。
しかし、ロシア語では語尾から性を判断できる名詞が多いため、基本的な規則を身につければ、徐々に見分けられるようになります。



