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#47 ロシア語の造格の使い方

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Aoba

ロシア語で「友達と話す」「ペンで書く」「医者として働く」と表現するとき、「友達と」は с дру́гом、「ペンで」は ру́чкой、「医者として働く」は рабо́тать врачо́м のように名詞の形が変化します。

これらの表現で使われているのが、ロシア語の6つの格の一つである「造格」です。

造格には、道具や手段を表すだけでなく、職業や立場などを表すさまざまな用法があります。また、特定の動詞や前置詞の後に使われることもあります。

この記事では、ロシア語の造格とはどのような格なのか、基本的な語尾変化から主な使い方まで、例文とともに詳しく紹介します。

造格の基本

造格は、英語では instrumental case と呼ばれ、その名前が示すように、動作を行うために使用する「道具」や「手段」を表すことが代表的な用法の一つです。

次の文では、ру́чка(ペン)が造格の ру́чкой に変化しています。

  • Я пишу́ ру́чкой.
    ー 私はペンで書きます。

この場合、「何を使って書くのか」という動作の手段を造格によって表しています。

さらに、道具や手段を表すほか、特定の動詞や前置詞の後、時間を表す表現、受動文で動作を行った人を示す場合などにも造格が使われます。

以下の文では、друг(友達)が造格の дру́гом となり、前置詞 с と組み合わせることで「友達と」という意味を表します。

  • Я говорю́ с дру́гом.
    ー 私は友達と話しています。

また、「〜として」のように職業や立場を表す場合にも造格が使われます。

  • Он рабо́тает врачо́м.
    ー 彼は医者として働いています。

このように、造格にはさまざまな役割があります。そのため、「道具・手段」「一緒に行動する相手」「職業・立場」など、代表的な用法ごとに整理して理解することが大切です。

造格の語尾変化

造格では、基本的には男性名詞と中性名詞では -ом / -ем、女性名詞では -ой / -ей / -ью、複数形では -ами / -ями などを語尾につけて作ります。

まずは男性・女性・中性・複数に分けて、基本的な変化を説明していきます。

男性名詞:-ом / -ем

子音で終わる男性名詞では、基本的に -ом を付けます。

  • стол → столо́м
    ー 机 → 机で
  • врач → врачо́м
    ー 医者 → 医者として

一方、-й や  で終わる男性名詞では、-ем が使われることがあります。

  • геро́й → геро́ем
    ー 英雄 → 英雄として
  • учи́тель → учи́телем
    ー 教師 → 教師として

ただし、実際の語尾は語末の文字やアクセントなどによって変わるため、個々の変化を確認する必要があります。

女性名詞:-ой / -ей / -ью

 で終わる女性名詞では、基本的に -ой に変化します。

  • ма́ма → ма́мой
    ー 母 → 母と
  • ру́чка → ру́чкой
    ー ペン → ペンで

 で終わる女性名詞では、基本的に -ей が使われます。

  • неде́ля → неде́лей
    ー 週 → 週で
  • Ма́рия → Ма́рией
    ー マリア → マリアと

また、 で終わる女性名詞では -ью が使われます。

  • но́чь → но́чью
    ー 夜 → 夜に
  • две́рь → две́рью
    ー ドア → ドアで

このように女性名詞では、基本的には -а / -я / -ь のどれで終わっているのかによって、造格の形を判断できます。

中性名詞:-ом / -ем

 で終わる中性名詞では、基本的に -ом に変化します。

  • окно́ → окно́м
    ー 窓 → 窓で
  • ме́сто → ме́стом
    ー 場所 → 場所で

一方、 で終わる中性名詞では、基本的に -ем が使われます。

  • мо́ре → мо́рем
    ー 海 → 海で
  • по́ле → по́лем
    ー 野原 → 野原で

このように、中性名詞では -о → -ом-е → -ем と変化します。

複数形:-ами / -ями

複数形の造格では、基本的に -ами または -ями が使われます。

  • ма́мы → ма́мами
    ー 母親たち → 母親たちと
  • учи́теля → учителя́ми
    ー 教師たち → 教師たちと / 教師たちによって)

単数形では男性・女性・中性によって語尾が大きく異なりますが、複数形では -ами / -ями と比較的覚えやすい変化形になります。

ただし、ロシア語の名詞には不規則な変化をするものもあります。そのため、最初からすべての例外を覚えようとするのではなく、まずは стол → столо́мма́ма → ма́моймо́ре → мо́рем のような基本的なパターンから覚えていきましょう。

道具や手段を表す

造格の代表的な使い方の一つが、動作を行うために使う道具や手段を表す用法です。

次の文では、каранда́ш(鉛筆)と нож(ナイフ)が、それぞれ造格の карандашо́множо́м になっています。

  • Я пишу́ карандашо́м.
    ー 私は鉛筆で書きます。
  • Она́ ре́жет хлеб ножо́м.
    ー 彼女はナイフでパンを切ります。

このように、「何を使ってその動作を行うのか」を表す場合、ロシア語では道具を表す名詞を造格にします。

英語では write with a pencil や cut with a knife のように前置詞 with を使いますが、ロシア語では名詞そのものを造格に変化させることで、同じような意味を表すことができます。

また、交通手段を表す場合にも造格が使われることがあります。

  • Мы е́дем авто́бусом.
    ー 私たちはバスで行きます。
  • Он е́дет по́ездом.
    ー 彼は電車で行きます。

このように、авто́бус(バス)や по́езд(列車)を造格にすることで、「何を手段として移動するのか」を表せます。

なお、造格は移動手段そのものを示す場合に使われますが、現代のロシア語では、交通手段を表す際には「на + 前置格」を使った на авто́бусе(バスで)や на по́езде(列車で)という言い方がよく使われます。

職業や立場を表す

造格はその人の職業や立場、役割などを表す場合にも使われます。

例えば、動詞 рабо́тать(働く)を使って「〜として働く」と表現する際に、その職業を造格にします。

  • Он рабо́тает врачо́м.
    ー 彼は医者として働いています。
  • Она́ рабо́тает перево́дчиком.
    ー 彼女は翻訳者として働いています。

例文では врач(医者)と перево́дчик(翻訳者)が、それぞれ造格の врачо́мперево́дчиком になっています。この場合の造格は、その人が「どのような職業・立場で働いているのか」を表しています。

一方、単純に「私は〜です」と現在の職業を説明する場合には主格を使います。

  • Он врач.
    ー 彼は医者です。
  • Она́ перево́дчик.
    ー 彼女は翻訳者です。

どちらも職業について述べていますが、文の構造が異なります。врач を主格で用いた場合、「主語=医者」という関係を表すのに対し、造格では рабо́тать(働く)と組み合わせて「医者として」という役割を強調しています。

このように造格を使うことで、「その人が何者であるか」、「どのような立場で活動しているのか」を表すことができます。

быть の過去形と未来形で使われる

造格は、быть(〜である)の過去形や未来形とともに、職業や立場、状態などを表す場合にも使われます。

現在形で「彼は学生です」と表す場合、студе́нт(学生)は主格のまま使われます。なお、現在形では быть は通常省略されます。

  • Он студе́нт.
    ー 彼は学生です。

一方、過去について「〜だった」と表す場合には、быть の過去形である был / была́ / бы́ло / бы́ли を使い、職業や立場などを表す名詞には造格を使うのが一般的です。

  • Он был студе́нтом.
    ー 彼は学生でした。
  • Она́ была́ учи́тельницей.
    ー 彼女は教師でした。

この場合、студе́нт → студе́нтомучи́тельница → учи́тельницей のように造格へ変化しています。

未来について「〜である」と表す場合にも、быть の未来形 бу́ду / бу́дешь / бу́дет / бу́дем / бу́дете / бу́дут とともに造格が一般的に使われます。

  • Он бу́дет врачо́м.
    ー 彼は医者でしょう。
  • Она́ бу́дет учи́тельницей.
    ー 彼女は教師でしょう。

なお、быть は基本的に「〜である」という状態を表す動詞であり、「〜になる」という変化を明確に表したい場合には、стать(〜になる)を使うことができます。стать の後でも、職業や立場などを表す名詞には造格が使われます。

  • Он стал врачо́м.
    ー 彼は医者になりました。
  • Она́ ста́ла учи́тельницей.
    ー 彼女は教師になりました。

このように、現在の職業や身分を単純に述べる場合には主格が使われるのに対し、быть の過去形や未来形とともに職業・身分・状態などを表す場合には、造格が一般的に使われます。

まとめると、基本的には次のように整理できます。

  • 現在形:主格
    Он студе́нт.
    ー 彼は学生です。
  • 過去形:造格
    Он был студе́нтом.
    ー彼は学生でした。
  • 未来形:造格
    Он бу́дет студе́нтом.
    ー 彼は学生でしょう。

また、「学生になる」のように状態の変化そのものを表したい場合は「стать + 造格」を使います。

  • Он ста́нет студе́нтом.
    ー 彼は学生になります。

造格は特定の前置詞と一緒に使われる

造格は、特定の前置詞と組み合わせて使われることがあります。

特によく使われるのが、前置詞 с です。「с + 造格」の形で「〜と」「〜と一緒に」という意味を表せます。

  • Я говорю́ с дру́гом.
    ー 私は友達と話しています。
  • Она́ живёт с сестро́й.
    ー 彼女は姉/妹と暮らしています。
  • Я иду́ в кино́ с друзья́ми.
    ー 私は友達と映画館へ行きます。

また、前置詞 с は人だけでなく、「〜入りの」のように物を伴っていることを表す場合にも使われます。

  • Я пью чай с молоко́м.
    ー 私はミルク入りの紅茶を飲みます。

この場合の с молоко́м は「ミルクと一緒に」「ミルク入りの」というニュアンスになります。

また、造格を要求する前置詞は с だけではありません。場所や位置関係を表す次のような前置詞もよく使われます。

  • над + 造格:〜の上に
  • под + 造格:〜の下に
  • пе́ред + 造格:〜の前に
  • за + 造格:〜の後ろに
  • ме́жду + 造格:〜の間に

これらの表現では、「どこにあるのか」という物や人の位置関係が示されています。

ただし、под や за のように、意味によって造格以外の格を取る前置詞もあります。例えば、ある場所に存在していることを表す場合には造格を使いますが、その場所へ向かう移動を表す場合には対格を使います。

  • Кот сиди́т под столо́м.
    ー 猫は机の下に座っています(造格)
  • Кот побежа́л под стол.
    ー 猫は机の下へ走っていきました(対格)

最初の文では「机の下」という場所を表しているため、стол は造格の столо́м になっています。一方、二つ目の文では「机の下へ」という移動先を表しているため、対格の стол が使われています。

受動文で動作を行った人やものを表す

造格は、受動文で「誰によって」「何によって」動作が行われたのかを表す場合にも使われます。

英語では受動文の行為者を前置詞 by(〜によって)を使って表しますが、ロシア語では基本的に前置詞を付けず、名詞そのものを造格に変化させます。

以下では、能動文と受動文を比較しながら説明していきます。

  • 能動文:
    Толсто́й написа́л рома́н.
    ー トルストイは小説を書きました。
  • 受動文:
    Рома́н был напи́сан То́лстым.
    ー その小説はトルストイによって書かれました。

最初の能動文では、動作を行う Толсто́й(トルストイ)が主語なので主格になります。

一方で、その文を受動文にすると、рома́н(小説)が主語になり、動作を行った Толсто́й が造格の То́лстым になっています。

また、造格で表される行為者は必ずしも人とは限りません。物や自然現象などが何らかの作用を及ぼしたことを表す場合にも造格が使われることがあります。

つまり、能動文と受動文では以下のように主格と造格を使い分けます。

  • 能動文:行為者=主格
  • 受動文:行為者=造格

このようにロシア語では、「誰がその動作を行ったのか」という行為者を造格によって示します。

まとめ

造格は、ロシア語の6つの格の一つで、道具や手段、職業や立場など、さまざまな意味を表します。

主な特徴をまとめると、次のようになります。

  • 道具や手段を表すときに使われる。
  • рабо́тать などと組み合わせて職業や立場を表す。
  • быть の過去形と未来形で使われる。
  • с + 造格」で「〜と一緒に」を表す。
  • надпе́редなどの前置詞の後でも使われる。
  • 受動文では動作を行った人やものを表す。

造格を理解するうえでは、「どの語尾に変化するのか」だけでなく、「なぜこの文では造格が使われているのか」を意識することが大切です。

造格には多くの用法がありますが、それぞれ実際の表現と結び付けて覚えることで、少しずつ使い方が分かるようになります。

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